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マンション(集合住宅)か戸建てか?ル・コルビジェの『ユニテ・ダビタシオン』素敵な集合住宅。

バリアフリーの家とは
Photography: © Architecture de Collection
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少し前にBSのワールドニュースを見ていたら、フランスのボルドーで公共の低賃金の住宅が大規模改装され、多くの人々の暮らしが快適になったと報道されていた。
ニュースは英語の物しかないけど、とても素敵。

Grand Parc, Bordeaux review – a rush of light, air and views
French architects Lacaton & Vassal have bucked the trend by renovating a 1960s apartment block rather than demolishing it

公共住宅が素敵で家賃も安ければ、子育てにお金が掛かる人々や病気で収入に困っている人、勤労学生などには凄く助かる。

この建物。改修によって広いバルコニーが設置されたので一部屋の広さがグンと広がった。そのバルコニーは建物の補強となるもので、同時にこのバルコニーがサンルームのような明るくおしゃれなリビングとなった。おかげで明らかに冬の暖房費が安くなり、明るく温かく快適になったんですって。
広くなったサンルームのスペースで植物を沢山育てている人もいた。

この公共住宅の改修工事は合理的で、人々に喜ばれたからニュースになったと思う。
しかも、「建て替え」の三分の一の予算で済んだのだそう。
さらに嬉しいのは家賃は据え置き。しかも、人々が引っ越す必要なく改修工事が終了したとのこと。

ええ、ニュース画像を見た限りとても低賃金住宅には見えなかった。
街の中心に近く、便利な場所で、安くて快適で素敵な公共の集合住宅。

病気や障害でこれまで通りに家賃が払なくなって困った人、あるいはシングルで子育てで家賃負担が家計に大きく影響する人、学業に戻って再度社会生活をやり直したい人・・・

一時的に収入が不安定になることって人生の中で一度や二度は経験する。。

そんな人々に公共の家賃が安いアクセスの良い住まいがあるとしたら、非常に助けになる。
もし『行政が必要な時にこのような必要な”住まい”を与える事』が出来たとしたら。

この集合住宅を見ていて、ある建物を思い出したわ。

ル・コルビジェの集合住宅

同じくフランス。
マルセイユにあるル・コルビジェが建てた、ユニテ・ダビタシオン』wiki情報もどうぞ。

働く現代人に合わせて合理的に造られていて、キッチンは手が届く範囲に棚や収納がしつらえてあり、狭くても非常に使いやすい空間になっている。
キッチンって、動かなくても必要なものがサッと手に届くことが凄く重要。ここは人の動作を細かく計算して作ったことが良く解る。

出典:https://thespaces.com/ Photography: © Architecture de Collection

部屋の天井も高くない。記録によると230㎝くらい。日本の家よりちょっと低い。
人によってはこの天井が低いと思うかもしれないけど、コルビジェは人のサイズを緻密に計算し、人が手を上げて付かないくらいに設計することがベストだと判断した様。

出典:https://thespaces.com/ Photography: © Architecture de Collection

だけど、一部のユニットでは室内がスキップフロアで構成されており、2階分と合わせた高い6mの天井。大きくリビングに窓があるので全く狭さを感じさせない開放的な空間になっている。

出典:https://thespaces.com/ Photography: © Architecture de Collection

出典:https://thespaces.com/ Photography: © Architecture de Collection

それぞれのユニット全てに光が入るように工夫がされている。光って大事よね、朝、光に当たらないと人間は体内時計が狂うもの。ベランダもちゃんとある。

各世帯のスキップフロアのユニットが交差しながらこの建物全体が構成されており、そのため建築当初、エレベーターは3フロアごとにしか止まらないようになっていたそう。
防犯の意味でもこれはイイと思う。

それに、このユニテ・ダビタシオンは独身者用から10人家族を想定したユニットまで用意されており、あらゆる年齢層が暮らせる住宅として設計されていた。

最上階にはプールがあり、建物内には幼稚園やカフェ、そして職場となるようなテナントもここに入れるように設計されている。

1950年代に考えられた建築とはとても思えない。斬新だし、現代にこのままの図面で”集合住宅”が沢山出来たら、街の暮らしがもっと快適になりそうなのに。

この巨大住宅全体が一つの”街”のように機能して暮らしが成り立ち、大きな池や公園が配置されたり、共同の庭や畑が作れたりするならいいのに。

どうして、発展したはずの現代にないのだろう?

1950年代にすでにこれだけの要素を持った住宅が作られたにもかかわらず、現在こうした集合住宅が散見されないのはどうしてなのだろうか?

やはり、資金の問題や時代が求め無くなったのだろうか?
日本でも、この時代以降、多くの”集合住宅”が建設されたけど、当初コルビジェが始めた集合住宅からはかけ離れた、いわゆる「団地」しか作れなかった。
それらは現在、高齢化と老朽化、空洞化。そもそも、エレベーターも無い。こんな建物はお年寄りには辛いものが在る。

市街地に住まないと仕事ができない。だけど、住むには高い家賃が必要。
住めないから仕事が続けられなくなる人がいる。
かといって地方で十分な収入を得られる職場を見つけたり、自分で稼ぐことが出来ればいいのだけど。

こうした矛盾の連鎖が世界中にある。

ええ、先進国の主要都市全体に起きている。

矛盾が起きる原点は何なのか。。。
ええ、”人”ではなく”金”で動いているからなのだと。

フランスの多くの集合住宅も資金面から日本と同じような経過を辿ったのだろうか。

でも、、フランスのボルドーの低賃金の集合住宅は、『コルビジェ』のような気質を受け継いだ建築家が少なからずいたから改修再生が出来たのかもしれないと思った。

コルビジェが考えたこの住宅から感じられるのは、”人”の為の時代に合わせた暮らし。
狭くても”人”の暮らしを考え抜いたのだろうという”心意気”を随所に読み取ることが出来る。
多分、70年前のフランス人がどう感じたかは解らないけど、現代の私が見ると、職場と家を往復して毎日を暮らす人々にとって、非常に良くできた家に思える。

ニュースを見ていると世界中の都心部での”住まい”問題は本当に”金”次第。
”シドニー”の場合は家賃が高騰し、今まで住んでいた家の家賃が払えなくなり追い出された。
郊外から通勤できないので、結果、ホームレスとなり公園に住んで通勤している。。
ニューヨークやサンフランシスコ、その他の都市でも同様の問題が起きている。
家賃(不動産価格)の高騰が人の所得以上に上がってしまったって事よね。

日本もいずれというか、、私が良く知らないだけでもう東京も同じなのかも。

人々の”家問題”のセイフティーネット。作れないのだろうか。
結局、家問題が解決できない人が増えるって事は社会にとって多大な損失になっていると思うのだけど。
自由社会に生きていると、ここでそれ以上に”稼げ”た人は生きていける。
でも、同じように努力し働いているのに、それ以外の多くの人が住まいに仕事に社会的地位を失っていくなんて、、。

フランスのボルドーのニュースはボルドー市の行政が動いたのか、良く解らない。
しかし、やはり解決策のカギを握るのは国家や政府が”人”に寄り添うかどうかによると思う。

でも益々、”人”より”金”社会が広がっているように見える。

我が家はけして裕福じゃない。でも、家を建てた。

我が家はバリアフリーの平屋。車いすの夫と暮らすにはベストな選択だったと思う。
だけど、家を所有することは大変だ。夫が自分の体力の限界まで仕事を続けたから今この家に住めてる。恐らく、夫のような障害がある状態にありながら、同じ条件下で働き続けることは非常に難しいと思う。

夫が車いす生活じゃないなら、都市近郊のマンションで暮らしたかもしれない。でも、今は庭もない、眺めも無いような暮らしは多分出来ない。それがあることの楽しさを知っているから。

人間ってやっぱり”生き物”だから、庭もなく地面から離れて、土の香りも花の香りもない閉鎖空間で生きるのは良くないと思っている。

土に触れたりすることのない生活は新しい発見もないなと今は思う。
植物の事一つにとっても自分で調べ、育ててみないと何も解らないからだ。

だけど、もし我が家の様な車いすの家族がいても快適に住めるような低賃金の住まいがあったとしたら、ローンを組んで迄”建てる”という選択はしなかったのかもしれない。
整ったインフラがあり、職場が近く、医療を受けやすく、新たな働き方を見つけやすい市街地近くの方がずっと暮らしやすいであろうと思う。

そうすると、公共の乗り物を使い、夫は自分の体調に合わせて一人で行動出来たかもしれない。もう少し自由に仕事の幅や趣味を広げられたかもしれない。私も通勤時間が短いなら、その時間を別の事に使えたかもしれない。

 

コルビジェが残した建築やボルドー市の公営住宅から感じたことは、様々な状況下で生きる”人”を大事にする社会がなければ後世での発展はないんじゃないの?ってこと。

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